さようなら最速PocketPC――Aximシリーズ終了に添えて


今更と言うニュースですが、DellPocketPCの扱いをやめるのですね。電子手帳型の小型コンピュータは、その利用形態から通信機能は必須と言うことで、これからは専らSmartPhoneの時代が来るようです。個人的には今の日本の状態を見るに、まだまだキャリアと端末を結びつけて考えたいとはとても思えないのですが、これも抗えない時代の流れのようです。


今から考えると、袋小路的な進化を遂げていたともいえる非電話型のPocketPC。その一つのAximシリーズは、いち早く高速CPUや高性能ビデオチップなど、先進的な性能てんこ盛りで気を吐いていました。特にX50v/51vはXScaleで最も高速なPXA272の624MHz版と、専用のビデオチップ2700Gを搭載した超高性能PDAでした。メモリの少なさと、VGA解像度特有の画面処理のもたつきはあったものの、PDAとしての実用性とマルチメディア性能の高さはまさに「小さなPC」。自分自身、昔から求めていた小型コンピュータの一つの姿であったのですが、世間的には受け入れられたとは言えない結果だったようです。嗚呼無常。


日々の手帳として、今尚手元でX50vが頑張ってくれていますが、ふとこの販売終了を機に、秘められた高性能を一度は引き出してみたい、と思ってみました。搭載の2700Gビデオチップは、他ならぬ「PowerVR」の末裔です。その昔、PC上でバーチャロンが開発されたり、RaveRacerが発売されると噂されたあのPowerVRです。第二世代がDreamcastに搭載されて再び脚光を浴びた、あのPowerVRです。今では、携帯電話向けの省エネルギービデオチップとして頑張っているようです。ちなみに、同じくDreamcastのCPUであった「SH-4」も似た様な道を辿っていますね。手元の「京ぽん2」は、ルネサス製のSH-4Mobileで動作しています。


話を戻して2700G。専用ビデオチップとは言っても、専用APIでしか使えないのであれば本末転倒。というわけで、本家サイトにてSDKが公開されています。embeddedVisualC++との組み合わせで、OpenGL|ESを使った3Dアプリケーションが開発可能との事。字面だけを見れば、PS3と同じAPIですね。やった!
・・・とはいえ、PS3はESの2.0規格、2700Gは1.1の、さらに限定規格(Common liteプロファイル:固定小数点計算&機能限定版)だそうです。プログラマブルシェーダまでは備えていません。それでも、バンプマッピング機能などを搭載している辺り、立派なものです。


そんなAximですが、マイナー過ぎたのか、本家のデモ以外はほとんどアプリケーションを見る事が出来ません。本家にあるPowerVR Racerを見るに、かつてRaveRacerを発売まで持っていけなかった悔しさと執念を見る気がします。今に至るまでも、あまり報われてはいないのかもしれませんが。無念orz


その数少ないアプリケーションの一つに、「Quake3Arena Mobile」なるものがあります。まさにQuake3ArenaのPocketPC移植版。Quake3エンジン自体、ソースコードは公開されているので、元々OpenGL準拠だったソースを、ES準拠に書き換えて移植を行ったもののようです。ARMv4(StrongARM以降)版と、2700G版があって、これを今回両方とも試してみました。なお、バイナリ本体は、既に本家サイトが消滅しているため、ゲットするにはネットの海を徘徊する必要があります。
相当にメモリを消費するため、基本的に40MB位エリアを空けておく覚悟が必要です。ARMv4版の方がメモリ的に非常に厳しく、ItaskMgrで不要なアプリケーションをすべて終わらせて40MBきっちり耳をそろえて開けてから、ようやく起動しました。ちなみに、WM5のX51vでは、128MBアップグレードを行わないと絶対に起動できないのだそうで・・・。もちろん、X50v/51vにとってはARMv4版を敢えて使用する必要は全くありません。実際に動かしてみたら1fpsしか出ず、どう考えてもプレイは無理な代物でしたorz
2700G版はまだまだ設定を詰める必要があるのですが、見栄え的にPC版のQuake3とほぼ変わらない状態でも、10〜14fpsをうろうろする位のようです。もっと軽くは出来ますが、表示しているディテールを考えると、非常に頑張ってるようです。実際に遊べるレベルです。すばらしい。



OpenGL互換でここまで来た、と考えると、本当に時代の流れを感じます。かつては数百万するハイエンドビデオカードだけの特権だった世界が、まさに手のひらに。とはいえ、この手のひらの中には、これからの未来は無いようです。EMOBILEEM-ONEにも、OpenGL|ES対応のGoForce5500が搭載されているのですが、その3D性能は未だ封印されたままだとか。専らワンセグ放送H.264デコードのみに使われているのだそうで。勿体無い。


#と、感傷に浸ってみましたが、こんな時代もあったねと、的にゲームを動かしてみました。
#いまや、PSPの方が高い3D性能を持っているのですが、PSPも先は決して明るくは無い様で。
#ポリゴンと言う手法も、それ単体では既に古典的なテクニックになってきているのかもしれませんね。