華やかなりし頃ー90年代のHMDを振り返る

この辺に貴重な情報が掲載されていました。ミラーを使って光軸を90°上方にあげて、レンズによってLCD上に表示された画像を数m先に結像させる、というのがちょっと前にあったプレーンなHMDの光学系になるのですが、これで画角を稼ぐのは至難の業だという話です。画角が広がると、ミラーもレンズもそのまま巨大化していくので、頭に載せるという前提ではすぐに限界が来てしまいます。


そこで登場するのが、フリーシェイプドプリズム。つまり自由曲面プリズムという奴ですね。複数の曲率を持つ単なる非球面ではなく、複雑な曲面形状を持っていて、広画角化で生じる収差による画像のゆがみを、小型のプリズムのみで最小限に押さえ込もうという試みです。この辺はまさしく光学屋さんのお仕事ですね。素人には到底真似出来ない領域です。


しかし、その努力によって得られる画角も35°程度。限界といわれる30°から、+5°程度です。視界全体を覆う画像を提示するとなると、そもそも画像そのものが平面を維持できなくなるし、おそらくプリズムを使用するにしても想像を絶する形と大きさになりそうです。市販品として完成するまでの過程で、並ならぬ妥協点の選定と設計の壁という苦労があったんだろうなと想像します。