映画を見てみる――V for Vendetta

久々に映画館まで足を運んで、映画を見てきました。やはり6畳一間で見るのとは違いますね(当たり前)。さて、この映画。マトリックスで有名なウォシャウスキー兄弟が脚本を書き、マトリックスの、ファーストアシスタントの人(実はよく知らない)が監督になってます。「マトリックス」は、個人的な評価として、ありえない構図とありえないアクションをひたすらに楽しむ娯楽大作だと思っているので、本作もそうだと思い込んで観てみたら、いろんな意味で間違えました(^^;;;


元々、漫画が原作として完結しているだけあって、世界観やら伏線やらがばっちり張られた正統派のフィクションだったようです。第二次大戦でドイツが勝利し、独裁者によってファシスト国家化したイギリス。そんな世界で、ただ一人アナクロな装束と剣を帯びた仮面の男、「V」が復讐のために立ち向かっていきます。


人並みはずれた身体能力と剣技で、敵を撫で斬りにして倒していく痛快アクションなのか、と思いきや、アクションシーンは案外少なめで、Vは非常に手の込んだ復讐劇を成し遂げていきます。彼の生い立ちや、復讐の理由などは、話の中で明らかにされていくのですが、個人的に本音を言うと、もうちょっと彼自身にスポットライトを当てて欲しかったという印象も。
ただ、制作者(おそらくは原作者も)のメインテーマは、Vという個人ではなく、Vという存在そのものが持つ意義というか、意思というか、そういったものにあるようです。イギリスではなく、フランスの話になるのですが、フランス革命に始まって、第二次大戦を通じてレジスタンス活動によって抵抗し、ついには市民自身の手でファシズムから国を守ることができた、という経緯もあって、欧州独特の感覚が込められた話になっているのを感じます。
微妙なネタバレになりますが、ヒロインのナタリー・ポートマンがバリカンで髪を剃られて行くのを見て、かつて「映像の世紀」で見かけた、ドイツ兵と交際のあったフランス女性が、同じように髪の毛を剃られて虐待される風景を思い出しました。何かしら通じるものがあるのかもしれませんね。


強大な独裁者に対して、ただ一人(ヒロインも合わせて二人?)のVがどうやって立ち向かっていくのか。その答えは、上に書いたようなテーマによって回答がなされています。この作中で、Vはあくまで一市民としての仮面を被ったままの存在であり続けます。市民が自由を勝ち取る姿は感動的ですが、その反面、敢えて仮面を脱ぐことを選ばないVの姿に、ちょっと哀愁を覚えます。自分にとって、この映画の物足りなさは、もっと個人としてVの事を知りたかった。そういう所にあるのかもしれません。


・・・・などと、色々考え込んでしまうような映画です。全編痛快アクションではないので、そこは最初から覚悟して見に行くと、より楽しめるかなと(^^;;