プロジェクトXへの疑問――編集した感動劇?

今日の深夜、おそらく再放送だと思いますが、「地上最強のマシン・F1への激闘」と題して、ホンダがF-1に参戦し、勝利するまで技術者が歩んだ道のりを扱っていました。レース現場のメカニックと、マシンを設計した研究室との確執。それを乗り越えた勝利という形で話が結ばれていたのですが、ホンダのF-1を語る上で最も外せなく、外してはならない事件が意図的に語られていないことに愕然としました。


ホンダF-1チームのRA272は、大胆な低重心化・軽量化等により、メキシコGPで念願の初優勝を収めたのは揺るぎの無い事実です。しかし、何故そこからいきなり現代のF-1へ話が飛んでいるのでしょうか?後継車のRA273が振るわなかったのは仕方ありません。しかし、その後空冷エンジンを積んだRA302というマシンでは、フランスGP本戦中に死亡事故が発生し、それがきっかけでホンダは一度F-1を撤退しているのです。


死亡事故は、もちろんドライバーその他にも原因があります。しかしこのRA302は、エンジンの冷却不良を始めとして様々な技術的問題を解決できておらず、レース本戦でまともに走ることがとても出来ない状態であったそうです。見切り発車状態で最悪の事態を招いたという過ちは、スルーして欲しくありませんでした(それが悲劇ばかりでないという意味でも)。


制作の都合上色々あるとは思いますが、物語性を重視するあまり、他に存在する大事な事をないがしろにしないで欲しいものですね。ドキュメンタリーとしての最低限のラインは維持して欲しいと願います。